世界に拡がる経絡治療
現在、日本の鍼灸は「日本鍼灸」「中国鍼灸」「現代医療に基づいた鍼灸(スポーツ、美容含む)」などに大別できます。
経絡治療は代表的な日本鍼灸です。
かつて鍼灸は仏教伝来とともに中国から伝えられ、東洋思想を色濃く反映し日本で育まれましたが、明治以降の西欧文明の波におされ大きく衰退しました。
その現状を変えようと、昭和の初期に柳谷素霊(やなぎやそれい)ほか数名が伝統的な日本鍼灸の再構築をはかり、これを「経絡治療」と名付けて啓蒙活動を積極的に行いました。
その後、経絡治療はいくつかの流派を生み、そのうちのひとつとして私が所属している一般社団法人東洋はり医学会があります。
本会は全国に支部があり、海外には現在13支部があります。最近では新たにイスラエル支部が誕生しました。
東洋はりの海外支部は、北米(2支部)、オーストラリア(4支部)、ヨーロッパ(7支部)となっており、特にヨーロッパで経絡治療はとても人気だそうです。
鍼灸業界には様々な治療法がたくさんあります。その中で東洋はり医学会の規模はというと、それほど大きくはありません。
ですが海外の鍼灸、特に欧米で東洋はりの経絡治療を学んでいる鍼灸師の拡がりは他団体に比べ群を抜いているというのが大きな特徴といえます。
欧米の方は皮膚が繊細であるということと鍼に対する感受性がとても高いので、日本式の経絡治療がよく合います。というわけで学ぶ人も治療を受ける人もたくさんいるのです。
また、私の鍼の師である岩下秀明先生(横浜奏玲治療室)が5月に「北米東洋医学誌(NAJOM)」という海外で発行されている鍼灸専門誌の創刊25周年記念大会に招かれ、カナダで実技を披露した際は多くの欧米諸国の鍼灸師が興味を示したそうです。
岩下先生の治療室には海外の鍼灸師の方が研修のため来られることが度々あり、皆さんとても熱心に学ばれています。
当院にも海外の方が治療を受けに来られます。
私は英語が苦手なのですが、デニスさんが初診で訪れた際、偶然にも前の治療の方が通訳のお仕事をされていて問診のお手伝いをしてくださいました。本当に助かりました。
治療中は患者さんの体が訴えるところへ自然に手と鍼が向かうので言葉の壁は全く問題ありません。とてもリラックスして元気になって帰られました。
デニスさんからはいつもメールで連絡が来るのでグーグル翻訳がとても役立ちました。そして音声翻訳機のポケトークを手に入れた私は会話もお互いストレスなく意思疎通ができようになりました。 今の時代は便利ですね~
デニスさん曰く、このポケトークはグーグルよりも翻訳が正確でわかりやすいということです。
先日、デニスさんからしばらく日本に来ることがなくなるので、ドイツで鍼治療を受けることができないかという相談がありました。
そこで私は東洋はりドイツ支部の会員に連絡をとり、これからもデニスさんが経絡治療を継続できるようにお繋ぎしました。
これぞ東洋はりのネットワーク!
お別れの治療最終日、名残惜しい気持ちを伝えたいと思っていたところ、デニスさんの初来院時のように、次の治療でいらした方が英語を介してのお仕事をされている方で通訳をして頂けました。
こういう時は音声ではなく自分たちの声で伝えたいものです。本当にありがとうございました。
実は夫が今年から海外勤務となり英語圏で生活しているのですが、私も英語の勉強しようかなぁ。