目の痛みと頭痛
痛みや頭痛にはさまざまな原因があり、患者さんのお話からどのように病態を把握するかということが治療のポイントになります。今回の主訴では問診内容から「旅行後のお疲れ」「天候不順による気圧の変化」「痛みが出ている場所」に注目しました。その他にも脈診や腹診などいろいろな条件を勘案しますが、それらすべてが治療方針と整合性が取れているかが大切です。
痛みを感じる場所は目の奥、耳の前の頬骨付近(顎関節に指を当てて口を大きく開けるとくぼみのできる所)、そして下あごの角の少し膨らんだ部分とのことです。このラインは陽明胃経(ようめいいけい)という経絡の流れと一致しています。この経絡の流れのことを流注(るちゅう)と呼びます。
東洋医学の脾と胃の働きは現代医学と近い部分もありますが、とらえかたに違いがあります。鍼灸治療の観点からみると、疲労と気象の変化が体に負担となり、脾胃の働きが弱まります。脾経には運化作用があり飲食から得られる精気を全身に送ります。脾が虚(活動が弱まる)になるとお腹は減るが食欲を感じない、体の重だるさ、身体各所の痛みといった症状が出やすくなります。脾(陰)と胃(陽)は陰陽関係にあり密接な繋がりがあります。
それから目や頭は肝経の影響を強く受けます。また肝経は体の防衛機能や、気血の流れを円滑に行う疏泄作用(そせつさよう)という働きがあります。疏泄の働きが悪くなると気が滞り、ストレスを感じやすくなり脾胃の運化作用にも影響します。
これらの考察や症状の現れている流注とあわせて、治療は脾肝相剋調整としました。身体への負担を考慮し、使用する鍼は鍉鍼(ていしん)という先端の丸い刺さない鍼で施術をしました。
肝経のツボにてい鍼を当て、気が至ると同時にゆっくりと鍼をはなすと同時に患者さんが「今、すっと目の奥の痛みが和らぎました」とおっしゃいました。気の流れを通すとこのように変化がすぐに現れることがよくあります。
疲労回復には、早めの鍼灸治療をおすすめいたします。