今年のテーマは肚(ハラ)
今年の成人の日は1月8日。
私が成人式を迎えたころは1月15日が成人の日と定められていたので、ピンとこないのが正直なところ。
当時は学生寮住まいで実家に届いたであろう成人式の通知も目にしてはおらず、私にとっては記憶の薄い思い出です。
時節柄、新たな目標や抱負を決意される方も多いのではないでしょうか。
私の今年のテーマは『肚に聴く』
この肚(ハラ)というのは自分のお腹、臓腑のことです。
「腑に落とす」とありますが(本来の使い方は『腑に落ちない』と否定形で用いるという説あり)、この「腑」というのは「はらわた」「臓腑」のことで、東洋医学でいえば五臓六腑を表します。
腑は単に体の生命活動としての働きだけではなく、精神や思考、心の在り様にも関わる重要な役割を担っていると考えられています。
新しい情報をキャッチして知識として理解するのは脳の働きですが、それを腑に落とすことにより自分自身の深いところと繋がり、心の底で納得できるとともに、経験からも身についてこその「腑に落とす」なのだと思います。
鍼治療は、治療法則や手順がきちんと決められたうえでの施術となりますが、この疾患だからこのツボということではなく、お一人おひとりの訴えを丁寧に聴いて身体の状態を診ながら行うオーダーメイドの治療といえます。
ですから、頭で考えるだけではどうもしっくりこないという時があります。
そういう時は、お身体に触れた感覚とか、患者さんが入室のときから放っていた気の状態、私自身の今の精神状態、あらゆる状況を考慮して治療方針を決めます。
そして最終的に答えを導くために問いかける場所が、私の「肚(はら)」なのです。
実は治療において、一番やってはいけないことは、迷いながら鍼を打つこと。
このツボでいいかな?と迷うくらいなら、その鍼はやめたほうがいい。
このように私は教わりました。一本の鍼の影響はとても大きく、無駄な鍼は打てば打つほど患者さんに負担をかけてしまいます。「たくさん打てば、どこかで効くだろう」という考えはもってのほか。
迷いなく信念をもって鍼を扱えば、仮にベストの選穴ではないツボだったとしても、効かせられる鍼になるとも言われています。
そういう決断を行う場所は、やはり『肚』なんだと思います。
ちょっと話はそれますが、最近は鍼灸・接骨院業界にも経営コンサルタントやSNSを駆使した宣伝方法など、様々な現代を取り巻く指南が溢れています。もちろん時流をよんで消費者の求める技術を提供できることも大切なことです。
しかし溢れる情報に翻弄され、本意ではない営業スタイルや大衆におもねるだけの薄っぺらいサービスはいつか廃れてしまうでしょう。
当院は小さな鍼灸院ですが、自営業なのでなんでも自分で決めなくてなりません。ですから「腹を決める」「腹を据える」という姿勢がとても大切です。
だからといって、決して古くさい頑固あたまで治療室を守っているわけではありません。周りの意見も取り入れながら、柔軟に日々進化する軽やかな治療室でありたいとも思います。
ですから大事なときは「肚に聴く」。
自分の内側からの声を信じて、本来の自分で生きることができればなによりです。
用賀神社へ初詣に行った帰りに夕暮れの空を眺めたら鳳凰のような雲を発見。
晴れやかな年明けとなりました。