腰痛、手足の冷え、頑固な便秘/女性
鍼灸治療では一度に複数の症状を訴える方も多くいらっしゃいます。一見、別々の疾患のように思われますが、問診や切診(触診のこと)で確認をすると、体質や生活習慣の影響で現れる症状の連鎖としてみることができます。この方の場合は、手足の冷えにより血流が悪く、体も全体にこわばり、腹部はたいへん冷えていました。同じように、臀部や腰周辺も冷えと自発痛があります。そうすると腸の動きが停滞して便秘を引き起こします。
東洋医学では病状の把握を虚と実で判断します。勢いがなく、弱っている状態や慢性的な鈍痛は虚証。熱や硬結、激しい痛みはおおむね実証とみます。便秘は虚でも実でも現れます。こちらの女性は、最近甘いものを好んで食べるようになり以前はそうでもなかったのに困っている、とお話しされていました。
五臓の特性(五味)で、脾は甘味を現わします。このように味の好みが急に変わり、体によくないとわかっていても欲求が抑えられないというのは、脾経の変動が考えられます。甘いものの偏食は脾の実と判断しました。
腰痛、冷えの他、深い睡眠が出来ないという訴えもありました。実は脾胃に邪実があると腎の機能が侵され睡眠に影響がでます。よって治療は腎虚脾実証としました。腎経のツボは復溜・尺沢。脾経の実をとるため陰陵泉に瀉法。鍼で気を補うことを補法、邪気を取り除くことを瀉法といいます。所見を確認しながら全身の調整をして治療を終了しました。
2回目来院時のお話では、前回の治療後は帰宅してまもなく便通があったそうです。腹部の張りがとれ、体が楽になったことでよく眠れたとのこと。定期的に通院され、徐々に腰痛もなくなりました。